髄膜腫は中年以上の方に発生する良性腫瘍ですが、放射線や抗がん剤に感受性がほとんどないので、外科的に摘出する以外に治療法がありません。頭のどこに腫瘍があるかで手術の難易度が違います。表面近くで大事な血管を巻き込んでいない髄膜腫は治療しやすく、反対に脳深部で脳血管や脳神経を巻き込んでいる髄膜腫の治療は困難です。外科的摘出が困難である場合に、放射線治療が試みられたりします。
神経膠腫はあらゆる年齢に発生し、手術だけで治癒できる良性神経膠腫から、あらゆる治療をしても治癒困難な悪性神経膠腫までいろいろなタイプがあります。悪性神経膠腫は正常の脳のなかにしみこむように発育しますので、後遺症を避けるためにはあきらかに腫瘍とわかる部分だけを切除することしかできません。そのため、手術はできるだけ腫瘍の量を減らすことが目的となり、術後の放射線治療や抗がん剤による治療が必要です。現在のところ100%かならず治せる治療法はありません。
髄芽腫は幼児や子供の小脳に発生する悪性脳腫瘍です。最近は、発生頻度が低下してきていますが、治療困難な脳腫瘍のひとつです。しばしば水頭症を伴っていますので、原因不明の頭痛、嘔吐が症状です。手術によってできるだけ腫瘍を摘出した後に、放射線治療や抗がん剤による治療を行いますが、治療抵抗性で死亡する場合がすくなくありません。
聴神経腫瘍は中年以降の女性に多い脳腫瘍です。難聴で発症することが多いようです。聴神経という音を聴く神経にできる良性腫瘍ですが、治療は手術や特殊な放射線治療であるガンマナイフがあります。治療でもっとも問題になるのは聴神経のとなりにある顔面の表情筋を動かす顔面神経の障害です。腫瘍によってすでに引き伸ばされているため、治療で顔面神経障害(顔の麻痺)がでることが多い腫瘍です。
胚細胞腫は小児から若年成人までに発生する腫瘍です。症状は頭痛・嘔吐が多いのですが多飲・多尿、背が伸びない、生理がとまるなどのホルモン障害でも発症します。治療は抗がん剤と放射線治療が中心となります。施設によって治療成績が異なりますが、悪性胚細胞腫以外は治癒可能になりつつあります。
転移性脳腫瘍は脳以外の臓器の癌が、脳に転移した状態です。しばしば多発するのですが、近年ガンマナイフ・サイバーナイフという特殊な放射線治療の導入により、小さな病変であれば手術をせずに治療ができる場合もあります。九大病院にも近々サイバーナイフ導入の予定です。